千葉家庭裁判所 昭和38年(家)1247号 審判 1963年12月09日
申立人 甲野花子(仮名)
被相続人 亡甲野一郎(仮名)
主文
被相続人乙野一郎所有の別紙目録記載の不動産全部を申立人甲野花子に分与する。
理由
本件申立の要旨は申立人は被相続人乙野一郎と昭和一二年三月から昭和三四年八月九日同人が死亡するまで事実上の夫婦として生活を共にしていたものである。申立人等が法律上の婚姻をしなかつたのは当時被相続人は戸主であり申立人は法定推定家督相続人であつた関係から容易に婚姻届ができなかつたためである。
被相続人乙野一郎にはその所有名義の別紙目録記載の財産があるが、同人には法定の相続人がなく民法所定の公告手続を了したが相続人である権利を主張する者がないので上記財産の一切を申立人に分与されたいというのである。
そこで当裁判所は調査官作成の事件調査報告書、当庁昭和三七年(家)第一〇〇九号相続財産管理人選任記録、昭和三八年(家)第一五九号相続財産の管理に関する処分事件記録等を総合して判断するに被相続人乙野一郎に対する相続人搜索の公告等、民法所定の手続を完了したが相続人である権利を主張する者がなかつた事実、申立人と乙野一郎は昭和一二年三月から乙野一郎が死亡するまで内縁の夫婦として同棲し生計を同じくしていたのみでなく本件不動産は昭和三三年に買求めたもので実質は夫婦の共有財産とも認むらるべきものであり申立人は被相続人の死亡後も同人の負債の支払をもなし全く自己の不動産と同様の管理を続けている等の事実が認められる。
従つて本件申立は相当であるので民法第九五八条の三第一項に基き主文のとおり審判する。
(家事審判官 尾崎力男)